201808 欧州内科学会

2018年の夏休み、とあるきっかけで、飛び込み3泊5日ドイツのWiesbadenで行われた内科学会に参加した。発表演題もなく、直前に飛行機をとり、時差もきつく、英語もわからず、最寄駅を目指すための電車のチケットの買い方も分からず、まごついているあいだに高額な切符代をふっかけられたりもしたけれど。

腹部エコーの当て方のワークショップに参加したのと、潜在性甲状腺機能低下の話が面白かった思い出。当時あまり関心がなかったがマルチモビディティの話もあったかも。鉄と感染症の話もあったかもしれぬ。→メモしてた。

 

急性期の感染症で鉄欠乏を合併していたら、補充しない方がいいのだろうか?

今だったら当時の演者の方もビタミンD補充してないだろうなぁ。

 

 

 

 

その時のメモ

 

・潜在性甲状腺機能低下症
・エコー:正常構造のスケッチ
・プレゼンテーション

 


"The art of managing clinical complexity: An integrated, patient-centered approach"
8/30
-腹部エコー ハンズオンセミナー
・圧力をかけることと、呼吸をうまくコントロールすることが重要
・正常 矢状断
大動脈、下大静脈の同定 腹腔動脈、上腸間膜動脈の分枝
リンパ節と似て黒っぽく(低エコー)見える生理的な5つの構造: 十二指腸、左腎静脈、横隔膜脚、門脈合流部(脾静脈とSMV)、食道
IVCの呼吸性変動
尾側に追って、総腸骨動脈の分岐まで追う
・正常 横断面
膵臓の同定 頭側→尾側に追っていく はじめに尾部、体部、頭部の順に見えてくる
5-10度反時計回りに傾けることが大事
腹腔動脈が見える断面: 肝動脈、脾動脈への分枝 脾静脈が膵臓の背側を走る
左腎静脈が見える断面: Ao, SMAに挟まれるように左腎静脈が走る
・右上腹部斜走査
門脈、総胆管 <6mm の描出
総胆管と肝動脈は鑑別が困難
門脈は3つ組を形成しているので結合組織が多いため、周りが白っぽく見える
・右季肋部
IVC→ 3本の肝静脈


・胆嚢の描出
脾臓の描出
右手で脾臓を押さえてみよ。→思ったより背側にある
脾臓の大きさ 11-12 × 4-5
脾静脈、膵尾部
・肝臓全体の描出 縦と横で
右葉 S7-かなり上側にしないと難しい 左手もうまく使う

 

 

 


心不全の指標
IVC >20mm
肝静脈2本目の分枝で >6mm
強制吸気にてIVCが虚脱しない
胸水(最初は右側だけのことが多い)


基準値
腹部大動脈 腎より上 <2.5 cm 腎より下 <2.0 cm 2.5-3.0 cm 拡張 3.0 cm以上 瘤
胆管 総胆管 <0.6 cm 胆嚢摘出後 0.9 cm 肝内胆管 0.4 cm
胆嚢 壁 <0.4 cm 食後なら <0.7 cmまでOK size 11cm × 4cm以下
膵臓 頭部 <3.0cm 体部 2.0cm 尾部 2.5cm 膵管 <0.2cm
門脈 <1.3 cm 正常 1.3-1.5cm gray area >1.5cm 門脈圧亢進 


8/31
-The potential impact of digital medicine: opportunities and challenges 
データの安全性の問題、flexible work hourへの可能性
-Update in thyroid disorders
・無症候性甲状腺機能低下症の評価→TSH, fT4はワンポイントではなく時間をおいて何度か測る(1/3で自然に基準値へ戻る)
・最近のNEJMのTRUST trial の問題点: TSHの上昇が僅かな例を扱っている、ベースの症状が大したことない
・case1 高齢なら生理的にtshは上昇する ∴経過観察
・case2 妊婦 妊娠するとhCGが を刺激してfT4は上昇するはず TSH 4.5は異常
チラージン開始
・TSH が上昇すると、早産のリスクが上がる
・TPO 抗体が陽性だと、流産のリスクが上がる 
-How to stop the obesity tsunami?
・肥満は疾患である
BMIだけでは評価ができない (同じBMIでも、脂肪組織をみると炎症性変化があるものとないもの)
・なぜダイエットは失敗するのか?
カロリー摂取が減ると、グレリンが上昇し食欲が亢進する (恒常性を保つ働きによる。驚くべきことに、肥満患者であっても、カロリー摂取が減ると同じ働きが起こるという。しかも、食欲の亢進はカロリー摂取を元に戻してもしばらく続く。ダイエットを成功させるには、セットポイントを正常化させなければならない。)
・運動
-Update in gastroesophageal reflux disease
・症状: 胸焼けなど特徴的なもので疑う
・診断: pH monitoring はあまりしない、PPI test (PPIを開始して症状が改善するか調べる)はよく用いられる
・Barret 食道、好酸球性食道炎
-Iron disorders 
・鉄は糖と似ている。血中濃度が過剰でも不足でも良くない。
取り込み(十二指腸) ferropotin 貯蔵 フェリチン 運び屋 トランスフェリン
・ヘプシジンの発見
・鉄を能動的に排泄する機構は人体に存在しない。
・鉄は生体にとって不可欠。鉄が多いと細菌にとっても良い環境→感染にかかりやすくなる。
・鉄不足→鉄欠乏性貧血 HFrEFで鉄補充が良さそう、一方感染への悪影響は?
・鉄過剰→ヘモクロマトーシス、他様々な病態に関与
-Update in heart failure, atrial fibrillation 
BNPでスクリーニング
・腎機能が悪くても、ACE inhibitorを控えすぎない方が良い
・慢性心不全の急性増悪でβ遮断薬を続けるべきか?→β convinced study
・Afが並存する心不全では、β遮断薬のbenefitは明らかでない
・持続性心房細動と発作性心房細動で、脳梗塞の発症リスクは変わらない
・発作性心房細動は発見するのが難しい、12誘導やホルターでは掴まらないことがままある
最近のデバイスの進化→より長期間のモニターが可能になった
今度は、どのくらいの頻度や持続時間から臨床的に問題となるのか?(抗凝固を始めるべきか?)という問題が出てきた。これは未解決。また、全員にスクリーニングをすべきか?も。脳梗塞TIAが指摘されたが、過去にAfが指摘されていなかった層では?
・Afがあると、たとえ脳梗塞を起こしていなくても認知機能が低下する? 機序は不明、微小な塞栓が起きているなど、色々な仮説。
・afの薬物治療: rate control, rhythm control, anticoagulation 
・アブレーション


9/1
-High value care: importance of untangling the complex interactions of several co-existing diseases in every day practice
・高齢化に伴い、並存疾患があるのは当たり前
・電車の路線と同じように、塊がある 高血圧-糖尿病-心不全など
・よくあるジレンマ: 
抗凝固の適応 対 消化管出血のリスク
高用量ステロイド 対 糖尿病
高血圧患者の鎮痛 (経口NSAIDs は×、かといって全例にオピオイド? アセトアミノフェンや外用NSAIDsも考慮)
腎障害があると薬が使いづらい
-Update in platelet disorders 
ITPの治療: 古典的にはステロイド、脾摘 最近はTPO receptor agonistやMTXも
ITPとして診断、治療されてきた中に相当数のinherited platelet disorderがまじっている
→鑑別は丹念な病歴(家族歴含む)聴取が基本、巨大血小板はinherited platelet disorderに特徴的、ルーチンの骨髄穿刺は推奨されていない
-Calcium disorders →演者が変更、自己免疫疾患と食べ物の関係について
カプサイシン、ココア、クルクミンが良い クルクミンがSLEに良い
・Vitamin D 演者は2000単位摂取している、患者だけでなく友人にも推奨している
・"we are what we eat" プラケニルも植物から抽出している、ならば食物だって信じてよかろう
・シェーグレン症候群にてビタミンD不足とリンパ腫、末梢神経障害の関連
-Update in acute kidney injury, chronic kidney disease
・AKIの原因を同定し解除する 敗血症→敗血症の治療、腎毒性のある薬物が入ってないか見直し、必要なら中止する など
・RRAPIDというスマホアプリがある?
-Luncheon seminar
SGLT-2阻害薬→腎障害や心血管リスクを減少させる (EMPA-REG outcome)
DPP4阻害薬には心血管リスクを下げる効果は出なかった
症例❶67歳 女性 3年前に心筋梗塞2型糖尿病脂質異常症、喫煙者 現在心リハ中
内服: メトホルミン、スタチン、PPI、抗血小板薬、Ca blocker, β blocker
HbA1c 8.1 GFR 62 BMI28 BP 128/74 
加えるべきは? 1. なし2. DPP4 阻害薬 3. GLP1製剤 4. SGLT2阻害薬 5. その他
→ SGLT2阻害薬が良さそう、心血管リスク下げる
症例❷54歳男性、運転手、肥満。5年来の糖尿病、高血圧、sedentarism、うつ病
内服: メトホルミン、スタチン、アムロジピン、エナラプリル、サイアザイド
HbA1c 7.8 BMI 33 BP 135/89 GFR 79
加えるべきは? 1. なし2. DPP4 阻害薬 3. GLP1製剤 4. SGLT2阻害薬 5. その他
→ DPP4阻害薬を加えることが多そうだが、体重減少効果を期待してGLP1製剤やSGLT2 阻害薬も良い適応
-Update in pulmonary hypertension 
・呼吸困難や倦怠感など非特異的な症状から疑う
・リスクの層別化を行い、治療する
・10年前と比べて、薬は14種類に増えたが、ターゲットは3箇所で変わっていない
(プロスタサイクリン、ホスホジエステラーゼ、エンドセリン)
・key number: 2.8 m/s