20220904 New team/VB12 欠乏・葉酸欠乏合併例に対する葉酸補充について勉強した。

新しいチームで歓迎してくださり感謝の気持ちでいっぱい。

CQ:VB12欠乏による神経障害に対して、葉酸欠乏を合併している場合に葉酸補充は適応か?

について

 

1940-50年代の症例報告/ケースシリーズで、葉酸補充後に神経障害が増悪した例が報告されています(文献1, 黄色の部分)。葉酸補充で血液学的異常が改善するため、"マスク"されてしまい、ビタミンB12欠乏が分かりづらくなる懸念や、葉酸が神経障害を増悪させる可能性、ビタミンB12の貯蔵が低下する可能性が考えられている。また、葉酸の投与期間が長いほど、増悪しやすかったようだ。
しかし、葉酸補充vs.Placeboで効果を比較したランダム化比較試験が行われておらず、葉酸補充が悪さをしたのか、ビタミンB12神経障害が増悪した経過をみているだけなのか区別ができず、本当のところはわからない(文献2)。葉酸補充で神経障害が増悪すること自体を疑っている立場もある(文献1)。実際、最近の症例報告でTTPと鑑別を要した葉酸+VB12の両者欠乏例(文献3)では葉酸(経口)・VB12(筋注)を両方補充していた。(それぞれの補充時期の明確な記載はなかった。)
しかし、文献2では、開始時期によらず、長期の葉酸補充を推奨していない。

 

考察

結論が難しく、Do No Harmの原則に従い葉酸を補充せず様子みるか、あるいは明確なエビデンスがないので葉酸が欠乏している以上は補充するか、悩ましいと感じた。

葉酸補充について、診断がわかりにくくなることもしくは、ビタミンB12貯蔵が減ることが問題であれば、葉酸単独ではなくビタミンB12+葉酸を両方補充しているなら大丈夫かもしれないが、文献2では、VB12筋注を嫌がって経口の葉酸補充だけ続く場合があることが懸念されていた。では、VB12も経口に切り替えたら大丈夫なのか?など疑問は残る。

ランダム化比較試験をするには症例を集めることが難しいと思われ、この疑問を解決することが難しい。

 

 

参考文献

1. Lancet Neurol 2006; 5: 949-960Lancet Neurol 2006; 5: 949–60

2. Baillieres Clin Haematol. 1995 Sep; 8(3): 657-78

3. J R Coll Physicians Edinb 2020l 50: 144-7