20230228 web WEDGE

本日は和歌山県の総合診療の勉強会であるweb WEDGEで発表させていただきました。

 

WEDGEはジェネラリストとスペシャリストの間を繋ぐ勉強会として発足したそうです。

いつもはスペシャリストの先生方の話を聞いて勉強するジェネラリスト側の人間ですが、今回は総合内科らしい症例、悩んだ症例の経験をシェアさせていただきました。

 

飲酒歴のある低体温の症例でした。

飲酒と低体温の関係を調べてみると色々興味深かったです。

BMJ, 2006の偶発性低体温のレビューに「ビタミンB1欠乏を補正せずに復温するとウェルニッケ脳症のリスクとなる」と記載があり興味深いと思いました。ビタミンB1欠乏を補正せずに低血糖を補正するとさらにビタミンB1が枯渇しウェルニッケ脳症が悪化しうることは有名ですが、低体温を復温すると代謝が活発になってビタミンB1がより消費されるという機序は考えうるのかなと思いました。しかし、血糖の場合と違って復温がウェルニッケ脳症のリスクとなるという記載を裏付ける文献はPubMedで色々探しても、見つかりませんでした。Perplexity AIやelicitに聞いてみても見つけられませんでした。またこれを裏付ける研究をするのも難しそうです。

 

しかしながらウェルニッケ脳症の症状として低体温の報告が散見されることを踏まえても、飲酒+低体温→ウェルニッケを想起してビタミンB1早めに入れる!ということは考えて良さそうです。

 

アルコール摂取により、寒冷刺激→低体温となる機序についても勉強しました。

 

また、低体温で徐脈、低血圧になることは知っていても、○℃のときどのくらいか?と目安を把握することはできていなかったのですが、偶発性低体温の症例集積の報告から回帰式を用いて概算できることがわかりました。

予想されるより低値・高値であれば偶発性=環境要因だけで説明できない二次性の病態があるのではないかと疑うきっかけになります。

今回は32℃でもHR110回程度の頻脈であれ?となった症例でした。DKA, sepsisなどで頻脈+低体温はありうるようです。頻脈+Osborn涙の心電図の報告などありました。今回はアルコール性ケトアシドーシスで循環血液量減少していたのかなと思いました。

 

カンファレンスでは低体温・意識障害・ショックで復温に反応に乏しいケースで外傷性の出血性ショックを合併することもある、という救急の先生のご経験をシェアしていただき大変勉強になりました。

 

会を主催している先生は私の同期にあたりますが、和歌山の総合診療を盛り上げていきたい!という情熱に満ちており胸が熱くなりました。

事前にスライドに目を通していただき、妥協ないフィードバックをもらいました。伝えたいメッセージを何度もディスカッションしたおかげで最初より整理されたスライドにできました。

 

アルコール使用障害の急性内科疾患はは鑑別が増えますし、今回のようにビタミンB1投与や、離脱予防、リフィーディング予防、電解質などマネジメントで注意すべき点も多くやりがいがありますね。社会的プロブレムなどbioだけではうまくいかない症例も多く総合内科医の腕の見せどころかもしれません。難しい症例も多いですが今後も積極的に診療していきたいと思います。

 

 

https://drive.google.com/file/d/1AS71E4iotcW3yvcLAeOfCLNDan4HlDid/view?usp=drivesdk 

ジャーナルクラブ BMJ

ジャーナルクラブでBMJの生活習慣が記憶力低下と関連するか("Association between healthy lifestyle and memory decline in older adults: 10 year, population based, prospective cohort study" https://www.bmj.com/content/380/bmj-2022-072691)というテーマの研究を読みました。

アウトカムを「全般的な認知機能(MMSE)」ではなく「記憶力の低下」に着目した点と、遺伝学的なリスクとの交互作用を評価した点で新規性があるようです。

 

月並みな感想ですが

・新規性の軸が分かりやすい。文章も読みやすい。
・感度解析を丁寧にしており、DAGで共変量も検討しており、観察研究で因果推論に真摯に取り組んでいてすごい!(それでも、抄読会では鋭い指摘あり、なるほどと思った。)

・Cross-lagged analysisで逆因果を否定できるのか?→関連する論文、読む
・脱落を扱う際の逆確率重み付け:脱落を従属変数として扱う?

・年齢の”2乗”を調整 線形性の仮定が不要というか、年齢とともに加速度的に記憶力が低下していくことを表現できるのに納得。
・three-way interaction?
・interactionがjoint interventionを前提としているなら、遺伝子はunmodifiable factorなので、厳密にはeffect modificationというのが妥当か?

 

いつもは多くの論文をつまみ食いしてしまっていますが、今回、一本の論文を精読するのも論旨の構成など勉強になるなと思いました。時間はかかりましたが。

このような機会を通して論文を精読することで①academic writing の向上②methodologyの理解 につなげていきたいです。

ホスピタリストと継続性

自分の関心はどちらかというと家庭医療学や患者中心性ですが、現在は病棟での仕事がメインです。病院総合医、ホスピタリストなど称されている分野で現在発展してきていると思います。

職場が移ってからの大きな変化は「主治医制」から「チーム制」への変化です。

チーム制のおかげで、仕事のオン・オフがはっきりし、研究や勉強に確実に割ける時間ができました。また、休日のcallが劇的に減り、自分自身の精神衛生も良くなりました。課題としては、患者さんの診療の質を維持するために適切な引き継ぎや、チームメンバーとの意思疎通が重要になるところです。

継続性が少なくなってしまうこと、例えば受け持ち患者さんが自分の不在にしているときに急変してしまうことをどのように受け止めるか、、というところがまだ整理できておりません。前の職場では何かあれば主治医が駆けつける、という文化で医師-患者関係も築きやすいですが、引き継ぎ-引き継ぎになると患者さんやご家族も不安になるかもしれません。

個人が不在でも回るようなチーム作り、チームとしての継続性を維持できれば問題は解決すると思っています。

そうすると、今後は医師-患者関係だけでなく医療者-(患者さん+ご家族や介護者)のチームとしての関係作りが大切になりますね。

2023年は発信の年に

明けましておめでとうございます。

 

新年は心機一転、新しいことをしたくなりますね。

2023年は発信の年にしたいと考えております。

 

アウトプットすることは一番苦手(特に話すこと)ですが、まだ書くことの方が好きなので、書くことを続けていきたいと思います。

 

 

【2022年の仕事振り返り】

 

2022年は様々な変化があった。

臨床:

・内科専門医試験を受けた。

・9月より臨床に復帰した。手技(補助含む):CV4、腰椎穿刺2、胸水穿刺1、腹水穿刺1経験した。

・身体所見レクチャー:physical examinationの取り方で新しい学びがあった。

例)COPDの身体所見、呼吸音、心尖拍動、脱水の所見

・病状説明の本を読み、「CUP SOUP」という枠組みを学んだ。


来年したいこと

・病状説明の「型」をもとに、ICの仕方を教えられるようになる。
・2023/2 WEDGE発表
・自分の比較的には得意分野×病院の中ですきま産業を見つける
候補:家庭医療的な視点の教育、膠原病の勉強続ける
・病院横断的な業務に積極的に関わる
*緩和ケアチーム
+候補:医療安全、褥瘡リンク
・病院のプロモーションに貢献する(見学・実習に来てくれた学生さんや見学・ローテしてくれた研修医への教育)

研究:

・大学院に進学した。

・研究テーマで試行錯誤した。

研究の厳しさを知り、向き不向きがあると思ったが、あきらめるにはまだ早いだろうと自らを奮い立たせる。あえてポジティブな側面に目を向けると、基礎的な理解は深まったと自己評価したい。

統計的知識について:医療統計の講義で考え方を学んだ。STATA実習を受けSTATAの使い方を学んだ。

尺度について:Validity, reliability、など。Measurement in medicineを読み、COSMINチェックリストがあることを知った。

因果推論について:DAGについて勉強した(まだ不十分な理解)。What if?を読み始めている。

論文の批判的吟味について:天理では主にRCTの読み方について教えて頂いた。大学院の講義ではエビデンスユーザーとして予測モデルやSRについても批判的吟味の方法を教えて頂いた。教室の抄読会もあり、top journalに目を通す習慣はできてきた(大学所属だと読める論文が多いのがありがたい)。

来年したいこと
CQ 1日3個ひねり出す
・研究プロジェクト 3つ考える
・研究仲間を増やす
・What if 通読する
・Measuring well-being 通読する
・因果推論の科学 通読する